【2024年2月11日更新】
この記事では箱根駅伝歴代記録のうち,同一区間において
①2年連続区間賞を達成した選手
②2年連続区間新記録を達成した選手
について調べました.
2024年2月11日追記 5区に山本選手を追加しました.
箱根駅伝2年連続区間賞・2年連続区間新記録は?
今年も箱根駅伝開幕の日を迎えました.
箱根駅伝の長い歴史の中で、同一区間において2年連続区間賞,さらには2年連続区間新記録を達成することはどれほどの偉業なのでしょうか?
◆同一区間における2年連続区間新記録を達成するには3つのハードルがあります.
- 2年連続での区間賞であること
- 前年の記録を翌年の記録が上回ること
- なおかつ前年の記録が区間新記録であること
これらのハードルを乗り越えた選手は箱根駅伝の歴史の中で何人いたのでしょうか?
同一区間において2年連続区間賞および2年連続区間新記録山選手の記録がどれだけすごいのか,その価値を明らかにするため,このエントリーでは以下について調べました.
同一区間において
①2年連続区間賞を獲得した選手
②前年の自己記録を更新した選手
③前年の記録が区間新記録であり,翌年その記録を更新して連続区間新記録を達成した選手
興味ある方はぜひ続きをご覧ください.
箱根駅伝で2年連続区間賞を達成した選手
データの範囲について前置きします.
箱根駅伝は学制変更の前後を一緒にすると6回ないし8回出場した選手がいます.また選手層の厚さも年代によって違うと思いますので,今回はキリがいい50年前の第43回大会(※当記事の初稿当時、今年は第99回大会なので第43回大会は56年前となります)以後のデータを用いました.
なお,「第93回大会でコース変更。第92回大会以前の第4区、第5区、往路、総合の各記録は参考記録となった。(http://file.hakone-ekiden.jp/pdf/93_Record_all.pdf)」とのことですが,どのくらいの方が当時のコースで偉業を成し遂げたのかを知りたかったので,それらのデータも含めました.
元データはこちらです.
箱根駅伝−区間賞(往路)
箱根駅伝−区間賞(復路)
結果です.
①同一区間において2年連続区間賞を獲得した選手(太字は前年自己記録を更新した選手)
<1区:3名>
西山和弥 東洋大(94回,95回)
大迫傑 早稲田大(87回,88回)
武井隆次 早稲田大(67回,68回)
<2区:9名>
服部勇馬 東洋大(91回,92回)
M.J.モグス 山梨学院大(84回,85回)
渡辺康幸 早稲田大(71回,72回)
S. マヤカ 山梨学院大(69回,70回)
J. オツオリ 山梨学院大(65回,66回,67回)
大塚正美 日本体育大(58回,59回)
瀬古利彦 早稲田大(55回,56回)
服部誠 東農大(91回,92回)
井上俊 国士舘大(44回,45回)
<3区:8名>
秋山雄飛 青山学院大(92回,93回)
設楽悠太 東洋大(89回,90回)
O. コスマス 山梨学院大(87回,88回)
竹澤健介 早稲田大(84回,85回)
北島吉章 帝京大(76回,77回)
大津睦 大東文化大(66回,67回)
岩佐吉章 順天堂大(61回,62回)
山本吉光 東京農大(50回,51回)
<4区:7名>
田村和希 青山学院大(91回,92回)
田中宏樹 東洋大(80回,81回)
野口英盛 順天堂大(76回,77回)
榎木和貴 中央大(72回,73回)
豊福嘉弘 早稲田大(62回,63回)
高橋雅哉 早稲田大(60回,61回)
中島修三 順天堂大(57回,58回,59回)
<5区:11名>
山本唯翔 城西大(99回,100回)
細谷翔馬 帝京大(97回,98回)
柏原竜二 東洋大(85回,86回,87回,88回)
今井正人 順天堂大(81回,82回,83回)
柴田真一 東海大(75回,76回)
平山征志 日本体育大(63回,64回)
木下哲彦 早稲田大(61回,62回)
岡俊博 日本体育大(58回,59回)
上田誠仁 順天堂大(55回,56回)
大久保初男 大東文化大(50回,51回,52回,53回)
石倉義隆 日本体育大(48回,49回)
<6区:11名>
小野田勇次 青学大(94回,95回)
秋山清仁 日本体育大(92回,93回)
千葉健太 駒澤大(86回,87回)
野村俊輔 中央大(79回,80回,81回)
金子宣隆 大東文化大(77回,78回)
中沢晃 神奈川大(74回,75回)
広瀬諭史 山梨学院大(68回,69回)
谷口浩美 日本体育大(57回,58回,59回)
酒匂真次 順天堂大(55回,56回)
塩塚秀夫 日本体育大(52回,53回)
金田五郎 大東文化大(50回,51回)
内野幸吉 日本体育大(43回,44回)
<7区:3名>
林奎介 青学大(95回,96回)
小椋裕介 青学大(91回,92回)
揖斐祐治 駒澤大(76回,77回)
<8区:4名>
小松陽平 東海大(92回,93回)
下田裕太 青学大(92回,93回)
榎木和貴 中央大(70回,71回)
松田卓也 順天堂大(64回,65回)
<9区:4名>
高橋正仁 駒澤大(77回,78回)
坂口泰 早稲田大(58回,59回)
斗高克敏 日本体育大(53回,54回)
藤田国夫 日本体育大(43回,44回)
<10区:1名>
土谷和夫 日本大(43回,44回)
以上,合計61名でした.2区,5区,6区で31名と半数を占めています.
5区と6区は特殊なコースのため,山登りもしくは山下りに適性のある選手が固定される傾向のためか,平地コースよりも連続区間賞獲得選手が多くみられました.同様に,「花の2区」と呼ばれる最長距離区間2区もエース選手を固定する傾向があるようです.
こうしてデータを眺めてみると,なんと言っても5区山登りで4年連続区間賞を獲得した柏原選手の活躍が圧巻ですが(85回,86回,87回,88回),同区での4年連続区間賞はすでに大久保選手が成し遂げていたことは知りませんでした.
②同一区間において前年の自己記録を上回った選手
太字の選手は前年自己記録を更新した選手です.
数えたら合計40名,2区,5区,6区で26名となっていました.やはりメンバーを固定する傾向が強いこれら3区間で記録更新が生じやすいようです.
箱根駅伝で同一区間2年連続区間新記録を達成した選手
同一区間2年連続区間賞達成者のうち,2年とも区間新記録,すなわち自分が打ち出した記録を自ら更新したのは,第43回大会以後,次の選手たちだけです.
データ出典は箱根駅伝−区間新記録(1区・10区) です.他の区間についてはリンクがありますのでそこからご確認ください.なお,2年連続区間新記録については参照HPに青塗りがされているものを参考にしましたが,走者名・タイム・中継点及び距離等の変更についてもチェックし,2年連続区間新記録と読み取れたものについて以下に記載しました(42回大会だが10区の土谷を含む).このため,公式発表とは異なるかもしれません.
<1区>
武井隆次 早稲田大(67回,68回)
<2区>
M.J.モグス 山梨学院大(84回,85回)
瀬古利彦 早稲田大(55回,56回)
<3区・4区>
該当者なし
<5区>
山本唯翔 城西大(99回,100回)
柏原竜二 東洋大(85回,86回)
今井正人 順天堂大(82回,83回)
<6区>
秋山清仁 日本体育大(92回,93回)
中沢晃 神奈川大(74回,75回)
谷口浩美 日本体育大(58回,59回)
塩塚秀夫 日本体育大(52回,53回)
<7区・8区・9区>
該当者なし
<10区>
該当者なし
参考:土谷和夫 日本大(42回・43回)
以上,10区土谷を除く合計10名.
第43回大会以後の箱根駅伝56回の歴史において,同一区間2年連続区間賞達成者でさえ61名.その中で,同一区間2年連続区間新記録を叩き出したのはわずか10名しかいないのです.
2017年秋山選手の記録はモグス以来の快挙なのだ!
大会の年月が重なるにつれて区間タイムが短くなる傾向にあるため,区間記録更新は年々難しくなっていくと思われます.
そのような状況にもかかわらず,秋山選手は92回大会・93回大会においてM.J.モグス選手(84回,85回)以来の快挙となる2年連続区間新記録を達成しました.6区では中沢晃選手(74回,75回)以来です.
ここまでのデータから箱根駅伝で2年連続区間新記録を達成することがいかに難しいのかが明らかになりました.2017年の秋山選手の活躍はリアルタイムで見てましたが,これはそう簡単にお目にかかれる記録ではないのです.自分が生きている間にまた見られるかどうかもわかりません.
秋山選手は東京都の順天高校出身です.2016年に開催された全国高等学校駅伝競走大会女子第28回の東京都代表は順天高校.しかし,順天男子の活躍については聞いたことがありませんでした.
それもそのはず,同校の陸上競技部のHPを見ると女子のことしか掲載されておらず,男子については卒業した秋山選手のことばかり.「高校在学中の秋山選手は、数少ない男子部員として、3年間陸上部で活躍しました。」(高校 陸上競技部 | 順天中学校・高等学校 | Page 6).ほぼ女子陸上競技部としか思えません(失礼).
2017年1月4日読売新聞朝刊東京版の37面にはこう書いてありました.
6区を走る自分の姿を,高校時代から想像してきた.地元・板橋区の中学を卒業後,順天高校(北区)に入学.その時,陸上部顧問から「下りを走っている時のフォームがきれい」と激賞され,「箱根に出るなら6区」と心に誓った.
同高の陸上部は男子部員が少なく,駅伝大会の出場機会もなかった.それでも箱根を意識し,ジョギングや平地でも走り込みも,下りのように前傾姿勢で進む練習を繰り返した.山下りのスペシャリストとして定着した大学では「下りは苦しさよりも楽しさが勝ってしまう」と思うほど,絶対の自信を持つようになった.
もし,秋山選手が高校時代,「どうせここにいたって駅伝に出られないし」,などと考えて腐ってたら箱根で偉業を達成することはなかったかもしれません.秋山選手は目先の利益を追うのではなく,己を信じ,先を見据えて迷うことなく日々の研鑽を欠かさず積んでいたのでしょう.
2023年1月3日現在の箱根駅伝で同一区間2年連続区間新記録を出したのは秋山選手が最後ですが,連続区間記録更新を成し遂げるヒーローはいつかきっと誕生するでしょう.これまで気に留めることがなかった記録に注目しながら箱根駅伝を視聴する,という新たな楽しみが増えました.
ではまた!
【追記】2017年1月8日 気になったので,42回大会以前の2年連続区間新記録(コース変更・中継所移動等があった場合でも含む)を見たところ,1区2名,2区1名,3区1名,5区1名,6区2名,7区1名,8区1名,9区1名,合計10選手が達成していました.
つまり,全99大会における2年連続区間新記録は秋山選手含めいまだ19名しかいないことになります.→【2024年2月10日】全100回大会だと城西大・山本選手を加えて20名となりました.
【追記】2022年12月10日 2022年12月4日に開催された福岡国際マラソンにて,秋山選手が日本人トップの7位でゴール.パリ五輪代表選考会MGC出場権を獲得しました!中継を見ていましたが,解説陣は招待選手のばかり話していて秋山選手については終盤になってようやく触れる有様にやきもきしていました.これまで目立った記録がなかったと本人も言ってましたが,それはもう過去のこと.今後の活躍におおいに期待しています!
【追記】2023年1月3日 第99回箱根駅伝10区の青山学院大学中倉選手は第98回大会19区で区間新記録をマーク.2年連続区間新記録達成なるかと期待しておりましたが・・・やはり難しいものですね.