はじめに
2015年フィギュアスケートGPシリーズNHK杯,男子は羽生結弦選手322.4点,女子は宮原知子選手203.11点でそれぞれ1位となりました.
羽生選手の得点がものすごかったことは,拙記事で書きました.
それにしても男子と女子で100点以上の差があるのはなぜだと思います?
男子シングルと女子シングルで得点計算の何がちがうのでしょう?
調べてみたら数字の仕掛けがわかりました.
モンハンの攻撃力と係数の関係
『モンスターハンター』(モンハン)というゲームをご存じでしょうか?
羽生選手が武器をひっさげて「モンスターハンター4(MH4)」と「モンスターハンター4G(MH4G)」のCMに登場していましたね.

画像で羽生選手が持っている武器は大剣.他にも太刀,片手剣,ハンマー,・・・弓などの武器があります(筆者はP2G,P3,MH3Gを経て携帯機の小さい画面に耐えられずMHFに移行).ちなみに羽生選手はチャージアックスを愛用してるとのことですね.
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バージョンによって登場する武器は若干違いますが,このゲームのどのシリーズにも共通していることがあります.
それは,「基本攻撃力(武器倍率)が同じでも,違う武器種ならゲーム画面に表示される攻撃力は違う(遠距離武器は係数が同じとか例外はあります)」こと.
基本攻撃力100の大剣と片手剣があったするとMH4での表示攻撃力はこうなります.
大剣→480
片手剣→140
これは基本攻撃力に係数が乗算されているからです.モンハンでは武器係数と呼ばれています.大剣の武器係数は4.8,片手剣は1.4です.
表示攻撃力だけを比べると大剣がやたら強そうに見えますが決してそうとは言い切れません.実際にゲームをする上ではそれぞれの武器のそれぞれのアクションに割り振られているモーション値が大きく影響しますし,シリーズによっては属性値がものすごく多い武器もあるの,単純な比較は慎まねばなりません.
係数はフィギュアスケートの得点にも採用されているのです.
女子の係数は男子の80%
フィギュアスケートの得点は大きく三つに分けられます.
①技術点(テクニカルエレメンツ:TES)→各種ジャンプ,スピン,ステップそれぞれについての得点,後述します.
②演技構成点(プログラムコンポーネンツ:PCS)→スケーティング技術,つなぎのフットワークと動作,演技と実行,振り付け/構成,音楽の解釈の5項目からなる評価項目に対する得点
③減点(deductions)→転倒1回で-1点など
係数は②の演技構成点に用いられます(フィギュアスケートの採点法 - Wikipedia より).
係数は男子より女子が低く設定されてます.女子の係数は男子の80%なのです.
●男子 SP→1 FS→2
●女子 SP→0.8 FS→1.6
ある男子選手と女子選手がそれぞれSP,FSともに演技構成点が満点(50点)だったとします.
係数をかけると演技構成点の結果はこうなります.
●男子 SP→50 FS→100
●女子 SP→40 FS→80
同じ評価を受けていても,女子のほうがみかけの得点は低くなるのです.
そして,女子の得点が男子より低くなる原因はもう一つあります.
女子はジャンプ回数が少ない
フィギュアスケートの得点には①技術点があります.
技術点はジャンプやスピンなどの各技術要素の基礎点(Base Value)と各技術要素についての出来映え点(GOE)の合計得点です.
ジャンプやスピンには規定回数があります.4回転ジャンプを無制限に採り入れればそれだけ基礎点は伸びることにはなりますが,野放図にしていては競技として成立しません.
規定によると,FSのジャンプ回数は男子より女子のほうが1回少ないのです.
男子のジャンプ回数が8回なのに対し,女子は7回です.女子はジャンプ1回の点数分,男子より得点が低くなります.
さらに言うと,基礎点が高い4回転ジャンプを飛べる女子選手がほとんどいない現状も男女間の得点差に影響します.
4回転ジャンプを飛んだのは,安藤美姫選手だけと言ってもよいとのこと.
主要国際競技会で4回転ジャンプ(サルコウ)を成功させた唯一の女子選手
安藤美姫 - Wikipedia
ちなみに羽生選手の今季NHK杯の成績を女子の係数で表示すると293.57点になります.
一方,宮原選手の得点を男子の係数で表示すると227.58点になります.この得点はNHK杯男子シングル7位に相当します.
女子シングル歴代最高得点を叩きだしたキム・ヨナ選手の2010年オリンピック大会の総合得点は228.56点でした.これを男子の係数で換算すると254.95点になります.NHK杯の無良選手の242.21点を上回ります.
しかし,こんな計算には意味がありません.なぜなら男子と女子では係数も含めた規程がそもそも違うのですから.男女間での得点の比較はナンセンスなのです.
まとめ
フィギュアスケート女子の得点が男子より低い原因は,
1.演技構成点に乗算される係数が80%になっている
2.ジャンプ回数が少ない
という規程の違いにあります.
さらに言うなら主得点源が4回転ジャンプである男子とそうでない女子の技術の違いも影響します.
演技構成点への係数は,シングルのみならず,ペアとアイスダンスにも適用されています(結局全種目).演技種目によって規定が異なるので一概には言えませんけれど,係数など用いずに得点を表示してもらったほうが見る側からすればわかりやすいと思うんですけどね.
この記事がフィギュアスケートを楽しむお役に立てば幸いです.
ではまた!
【追記】2018.2.23 平昌オリンピック女子シングルが終了しました.メドベージェワ選手の演技構成点は77.47点.女子FS演技構成点の満点は80点ですので,男子に換算すると96.83点になります.ちなみに羽生選手のFS演技構成点は96.62点でした.