
はじめに:震度とマグニチュードは違う
昨晩(2016年4月14日21時26分頃),熊本県で震度7の地震が発生しました(平成28年熊本地震,以下熊本地震).被災された皆様にお見舞い申し上げます.気象庁によると1週間程度は震度6程度の余震が発生する可能性があるので十分な注意が必要とのことです.
今回の地震の震源地は熊本県熊本地方,震源の深さは約10km,地震の規模(マグニチュード)は6.4とのことです.
(出典はこちら:http://www.jma.go.jp/jp/quake/20160414213225395-142126.html,震度・震源の深さ・マグニチュード含む),
地震が発生するたび耳にするのが震度とマグニチュードです.
どちらも値が大きければそれだけ規模の大きい地震が発生したものと思うのが普通です.でも,両者は似て非なるものです.
震度は地震による揺れの大きさを表します.
マグニチュードは地震が発するエネルギーの大きさを表します.
震度とは
震度の計算方法は気象庁のHPに掲載されています(気象庁 | 計測震度の算出方法)が,計測震度計を見るのが早いでしょう.
S200 計測震度計 | 地震関連 | 製品ガイド | 明星電気株式会社
画像を見ると,計測震度6.2,震度6強と読み取れます.
計測震度計による計測震度は,表1の通り,0〜7まで10階級の震度階級に区分されています.なお,気象庁震度階級は日本独自のものですので,外国で発生した地震に当てはめられるとは限りません.
(出典:気象庁 | 計測震度の算出方法)
それぞれの震度階級がどれくらいの揺れをもたらすのかについての概況は以下の通りです(イラストの出典はすべてhttp://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/jma-shindo-kaisetsu-gaiyo.pdf).
上の震度階級表によれば,計測震度0.5未満の地震だと人は地震が発生したことを感じない,いわゆる無感地震となるようです.一方,計測震度0.5以上すなわち震度1以上は有感地震となります.
震度2だと,家の中で歩いていたり立ち仕事をしてたりすると感じないときがありますが,震度3になると揺れを感じます.
東北太平洋沖地震の後,余震が頻繁に起きています.しかしながら慣れというのは怖いもので,仙台の実家にいる親は,震度4なんてたいしたことないと言ってます・・・
東北太平洋沖地震のとき,東京都の半数以上の地域が震度5弱の揺れでした.うちでも本棚がずれて,それなりに多い蔵書によって雪崩が発生しました.
1978年6月12日に発生した宮城県沖地震を経験したときの震度が5強です.イラストの通り,食卓の下に隠れました.鉄筋を入れてないブロック塀が倒れ,人的被害をもたらしたケースが非常に多かったことを鮮明に覚えています.
でも,ここから先の揺れは経験したことがありません.
熊本県の地震が震度7です.
これまでに観測された震度7の地震は兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災),新潟県中越地震,東北太平洋沖地震だけでした.
熊本の地震を含め,これら4つの地震時のマグニチュード(Mj)を発生年順に並べます.
兵庫県南部地震 マグニチュード7.3
新潟県中越地震 マグニチュード6.8
東北地方太平洋沖地震 マグニチュード8.4
熊本地震 マグニチュード6.4
同じ震度でもマグニチュードが違います.では,マグニチュードについての簡単な説明にうつります.
マグニチュードとは
例えば,東日本大震災のときに発生した大地震(東北太平洋沖地震)のマグニチュードは9あるいは8.4とされています(東北地方太平洋沖地震 - Wikipedia).
この差はマグニチュードの計算方式が異なることを反映しています.前者はモーメントマグニチュード(Mw)=9,後者は気象庁マグニチュード(Mj)=8.4です.
マグニチュードの種類による計算式の違いは一般人には無縁ですので割愛して(物理も数学もスルーします),マグニチュードが違うと地震が発するエネルギーがどう違うのかについてだけごく簡単に触れておきます.
マグニチュードが1大きくなると地震エネルギーは31.6倍になる.
マグニチュードが2大きくなると地震エネルギーは1,000倍になる(厳密にはこの関係は逆とのことですが割愛します).31.6×31.6=998.56
マグニチュードの差が0.2の場合,エネルギーの差は約2倍になる(以上,出典はマグニチュード - Wikipedia).
マグニチュードが4大きくなると地震エネルギーは100万倍になります.
これは,マグニチュードと地震エネルギーに対数の関係があるからです.こちらがわかりやすいかもしれません.
身近な疑問に数学で考える。地震のエネルギーは対数で計算する。 数学のセンスを身につける問題/ウェブリブログ
◆地震が発するエネルギーが同じ,すなわちマグニチュードが同じでも,
震源が地中深くにあるのかそれとも浅いのか
震源からの距離は遠いのか近いのか
地表付近の地盤が固いのか軟弱なのか
などの違いによって,地表での揺れ方は変わってきます.
赤字で示したように,震源が浅く,震源からの距離が近く,地表の地盤が軟弱なほうが地表の揺れは大きくなります.
(出典: http://teikitest.benesse.co.jp/chu/science/science/c00579.html)
おわりに
東北地方太平洋沖地震の震源の深さは24kmとされています.これまで日本で観測されたなかでも最大のマグニチュードだったことに加え,震源が地表に近い場所で起きたため,地表に伝わった地震エネルギーがものすごいことになり,甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいです(東北地方太平洋沖地震 - Wikipedia).
まだ傷跡が癒えないまま,熊本県でまた震度7の地震が起きました.こちらはマグニチュード6.4とこれまで震度7が測定された地震の中ではもっとも低いものの,震源の深さが10kmと浅い場所で起きた地震ですので地表の揺れは大きくなりました.
日本は,いつ,どこで,どんな地震が起きてもおかしくないことを改めて認識させられました.
ではまた・・・
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【追記】4月14日21時26分頃に起きた「平成28年熊本地震」よりもマグニチュードが大きい地震が4月16日1時25分頃発生しました.熊本で震度6強,マグニチュード7.3でした.これが本震との見方を気象庁がしています.情報が確定次第,このエントリを随時追記・修正します.→4月16日1時25分頃の地震が本震で震度7となりました.
【追記】2016年8月24日,イタリア中部でマグニチュード6.2の地震が発生したとのことです.M6.2で6人死亡=建物倒壊、住民下敷き―伊中部 (時事通信) - Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースには震度は記述されていませんでした.上述の通り,私たちがふだん用いる気象庁震度階級は日本独自のものです.また,震源の深さや地表近くの地盤によって震度は違ってきます.
参考までに,ジュール値に換算,といっても値が大きくなるのでテラジュール(TJ)を用いるとこうなるとのことです(マグニチュード(Mw, Mj)換算 ジュール、TNT換算、カロリー、ワット時).
マグニチュード6.2→126TJ
マグニチュード6.4→251TJ
マグニチュード7.3→5623TJ
続報を待ちたいと思います.
イタリア中部でM6.2の地震、少なくとも5人死亡 建物多数が倒壊 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
続報です.
イタリアの地震で死者250人 余震で捜索難航 | NHKニュース
【追記】2017年1月22日,ソロモン諸島でM8.4の大きな地震が発生しました.M8.4というのは東北地方太平洋沖地震と同じですが,ソロモン諸島の震源の深さは約170kmとのことです.
地震情報 2017年1月22日 13時30分頃発生 震源地:南太平洋(ソロモン諸島) - 日本気象協会 tenki.jp