【追記 2019年7月11日】TOEICが大学入学共通テストの参加を取り下げましたね。他の民間試験に波及するかどうかが気になります。
【追記 2018年3月26日】「共通テスト」には本エントリーで紹介した7民間試験を行う事業者すべてが選定されました.ただし,英検等は従来の一次・二次という形式ではなく新しいものに.受験料も大幅アップの見込みと,頭が痛いです・・・
大学入試英語成績提供システムへの参加要件を満たしている資格・検定試験とCEFRとの対照表について:文部科学省
【追記 2017年10月13日】大学入学共通テストでは,2020〜2023年度の4年間は従来のマークシート方式と民間英語試験の両方の受験が必須となるようです(2017年10月13日読売新聞東京版朝刊1面).受験生の負担,そして親の懐具合への負担がより大きくなりますね・・・
2020年度大学入学共通テストによる入試英語大変革
注:この記事は2017年8月25日に公開しました.各民間試験のデータは当時のものです.
大学入試センター試験が廃止され,2020年度から「大学入学共通テスト(以下,共通テスト)」になります.[1]
うちではちょうど下の子の受験と重なるという.なので情報を集め始めました.
国語に長文問題が導入されるなど各教科いろいろ変わる中,もっとも影響が大きいのは英語.
なんと共通テストの英語試験には民間試験が活用されるようになります.移行措置としてセンターが作る問題(「読む・聞く」のみ)は2023年まで残るものの,2024年度からは廃止.
さらに,試験内容は従来の「読む・聞く」に加え,「話す・書く」も.
4技能試験になります.
受験生を持つ/持った親ならご存じの通り,センター試験は今や国公立大のみならず多くの私大も利用しています.この変革の影響はとても大きいです.
・2技能から4技能試験になる!
・センター試験廃止
→民間試験活用!
CEFRって何?
共通テストの英語が4技能の民間試験になります.
そして,テストの評価はCEFRに準拠することになります(セファール:ヨーロッパ言語共通参照枠,Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment).
CEFRとは「ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられるガイドライン」のこと.[2]
CEFRの評価には6段階(A1・A2・B1・B2・C1・C2)あり,最低レベルはA1,最高レベルはC2です.
どのレベルが民間英語試験に対応してるのか,かいつまんでおきます.
巷で良く聞くTOEIC900点(リーディングとライティングですね)はB2.
TOEIC945点以上だとC1.TOEICはリーディング&ライティングおよびスピーキング&リスニング両方ともC2には対応してません.
英検では次の通り.
・準2級→A2
・2級→B1
・準1級→B2
・1級→C1
こちらもC2には対応してません(以上,[3]参照).
7つの民間英語試験
この記事の執筆段階ではどの民間英語試験が共通テストとして活用されるのか明らかになってません.
いったい,どの試験が採用されるのでしょうか?
現時点で気になるのは受験のしやすさに尽きます.
共通テストを受けられるのは高校3年の4〜12月の間の2回までとなるようです.バンバン試験を受けて一番いいのを入試にもっていく,というわけにはいかないみたい.
各試験によって実施回数が違いますが(英検が年3回,TOEIC年10回など),その差が問題になることはたぶんないでしょう.
そこで気になるのは特に次の2点
①受験料
受験料はけっこう切実です.
なにしろ上の子のときは受験料だけで50万円もかかったのですから(涙).
35万じゃ甘い!大学受験の費用は50万円用意せよ - おまきざるの自由研究
②受験会場数
受験会場数は検定試験の受けやすさに直結します.①とかぶりますが,受験会場まで遠いのは会場までの所要時間もさることながら交通費もかさみます.
そこで,7つの民間英語試験について主に①と②を調べました.
1. 実用英語技能検定(英検)
実用英語技能検定(英検)は日本人なら誰でも知ってるだろう,資格の雄.
すでに全国約230都市・400の公開会場のほか準会場,中学・高校特別準会場合計約17,000会場で開催している実績は何よりの強み.
高校生のみならず,小学生・中学生も多数受験しています.
試験内容は最近変更されてます.4技能試験に対応したのでしょう.
・2016年度より1級,準1級,2級にライティングテストに観点別採点を導入
・2017年度より準2級,3級にライティングテスト導入.
受験料は準2級¥5,200〜1級¥8,400.他の民間試験に比べるとぐっと割安です.[4]
数多くの大学が大学入試に採用しています.ただし,大学・学部によっては英検に導入されたCSEスコア(CEFRに対応)の一定基準が必要になります(例・早稲田大学).受験の際はしっかり確認しましょう.
- 歴史と実績
- 試験会場数が多く,受験しやすい
- 検定料が安い
- ライティングテストの歴史が短い(特に準2級,3級)
2. TOEIC
今や社会人の英語資格として必須と言っても過言じゃないTOEIC.
大学受験で採用してる大学も多数あります.高校生のうちに経験し,高得点を取っておくにこしたことはありません.
ただし,4技能となると話は別かもしれません.
というのは,TOEICのスピーキング・ライティング(SW)テストの受験者数はリスニング・リーディング(LR)に比べるとまだまだ少ないからです.[5]
◆2016年度高校生受験者数(団体特別受験制度=IPテスト)
・TOEIC LR
→33,507人
・TOEIC SW
→スピーキング:1,756人,ライティング:1,678人
◆2016年度高校生受験者数(公開テスト)
・TOEIC LR
→28,789人
・TOEIC SW
→スピーキング:760人,ライティング:737人
●受験料が高いのも気になるところ.
・TOEIC LR:¥5,725
・TOEIC SW:¥10,260
合計¥15,985
会場数も英検に比べると少ないです.特にSWの少なさは気になります.
・TOEIC LR:最大251会場
・TOEIC SW:最大43会場[6]
- 特に大学卒業後の必要性
- 会場数が少ない(特に話す・書くの2技能)
- 検定料が高い
3. TEAP
2014年に始まったTEAP(ティープ:Test of English foe Academic Purposes).
「上智大学と公益財団法人 日本英語検定協会が共同で開発した、大学で学習・研究する際に必要とされるアカデミックな場面での英語運用力(英語で資料や文献を読む、英語で講義を受ける、英語で意見を述べる、英語で文章を書くなど)をより正確に測定するテスト」.[7]
・受験資格は高校2年生以上.難易度の目安は英検準2級から準1級程度.
・英検のような合否ではなく,受験生各人に得点(スコア)が付与.
基準スコアをクリアしていれば出願できる大学(上智大学など)や,一定のスコアを獲得していれば英語の試験を満点にする大学(関西大学など)があります.[8]
TEAPをセンター試験方式入試として採用している大学もあります.[9]
TEAP採用大学 | TEAP | 公益財団法人 日本英語検定協会
気になるのは受験会場と受験者数の少なさ.
これまでの試験は12都市での開催.最大35会場を設け,受験人数は約14,000人[6](朝日新聞).→冒頭に追記しました(2018.2.27)
受験料は4技能で¥15,000.TOEIC4技能と同じで高めです.
- 大学受験の標準となる可能性
- 歴史が浅い,受験者数・会場数が少ない
- 検定料が高い
4. GTEC
GTEC(ジーテック:Global Test of English Communication)はベネッセが実施している4技能試験.コンピュータで受験するGTEC CBTも2014年から導入.
GTECも入試に採用している大学があります.高校での導入にも注目.
・1998年から開始され,約94万人が受験(高校生数は不明).
・全国の1,550以上の高校で採用,東京都は「英語力判定統一試験」として採択とのこと.[10]
この動きが全国に波及するでしょうか?
ちなみにGTECスコア690-959で英検準2級,960-1189で英検2級,1190-1280で英検準1級となります[3].
試験会場数は1,770.
会場数は英検ほどではないけれど学校単位での受験ができるならもっと増えるかもしれません.ただしGTEC CBTは58会場しかありません.[6]
受験料は¥5,040.
英検より安いですね.何しろ大学受験だけで50万円かかるので受験料が安いのは親としては助かります.なお,GTEC CBTは¥9,720.それでも英検の上位級と同等.
- 検定料が安い
- 歴史が浅い
- 先行き不透明か?
5. TOEFL
TOEFLは「世界で最も広く受け入れられている英語能力試験,130か国10,000以上の大学や機関に認められている」英語試験.
「インターネット版のTOEFL iBTテストは各国の公認テストセンターで年間50回以上実施」とのこと(以上,[11]).
会場数は最大86.[6]
受験料はこれまでの試験で最高値の235米ドル.
これを2回受けるとなるとちょっと・・・
海外留学や海外の機関への就職を考えている高校生が受けるにはたぶん申し分ないかもしれません.
でも日本の大学教育や就職等にはどうかな,と思ってしまいます.
受験なさった方,どうお考えでしょうか?
- 国際性
- 会場数が少ない
- 検定料が高い
6. IELTS
IELTS(アイエルツ,International English Language Testing System)は「世界で290万人が受験し10,000以上の教育・国際機関,企業等が認定.海外留学や移住目的における英語能力テストのグローバルリーダー」.[12]
ケンブリッジ大学英語検定機構,ブリティッシュ・カウンシル,IDP Educationによる共同運営(と言われてもよくわかりませんが・・・),オーストラリア,イギリス,カナダ,アイルランド等の国およびアメリカの3,000以上の教育機関で受け入れられ,オーストラリア,ニュージーランド,カナダへの移民の条件になっているとのこと.[13]
約3.7万人が受験,会場数は最大約90,受験料は¥25,380.[6]
受験料はTOEFL並に高いし会場数も少ない.
これも2回受けるのはちょっと・・・
IELTSは国家公務員総合職試験と東京大学の推薦入試に採用されています.[14]
国際性は十分あると思いますが,国内での浸透はこれからでしょうか.
- 国際性
- 会場数が少ない
- 検定料が高い
7. ケンブリッジ英語検定
「ケンブリッジ大学英語検定機構は,学習者の英語力の向上と英語のスキルを証明するサポートを行っています.ケンブリッジ英検の試験対策を通じて世界中の人々とコミュニケーションできる自信と英語力が身につきます」.[15]
「Cambridge English(ケンブリッジ英語検定)は、イギリスの名門ケンブリッジ大学の一部門で非営利組織のケンブリッジ大学英語検定機構(Cambridge English Language Assessment)が開発・実施している検定試験であり、英語検定試験としては最も長い100余年の歴史を有し」ており[16],50以上の大学が何らかの入試形態に採用しています.[17]
受験料はレベルによって¥9,720〜¥25,380.会場数は12ですが2018年度中に47都道府県に拡大するとのこと.[6]
KET,PET,FCE,CAE,CPEという5段階のレベルがあり,それぞれ英検3級,英検3〜準2級,英検準1級,英検1級 ,英検1級以上に相当(IELTS,TOEIC,TOEFLそれぞれについてのレベルについても知りたい方は[18]を参照)
- 歴史と国際性
- 会場数が少ない
- 検定料が高い
おわりに
参考資料
[1]http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/07/__icsFiles/afieldfile/2017/07/18/1388089_002_1.pdf
[2]ヨーロッパ言語共通参照枠 - Wikipedia
[3]http://4skills.jp/qualification/comparison_cefr.html
[4]http://www.eiken.or.jp/eiken/schedule/
[5]http://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/pdf/DAA.pdf
[6] 朝日新聞朝刊2017年8月24日東京版7面
[7]TEAP | 公益財団法人 日本英語検定協会
[8]http://www.fourskills.jp/teap-entrance-exam
[9]TEAP採用大学 | TEAP | 公益財団法人 日本英語検定協会
[10]http://www.benesse-gtec.com/fs/about/ab_concept
[11]https://www.ets.org/jp/toefl
[12]http://www.eiken.or.jp/ielts/
[13]IELTS - Wikipedia
[14]http://www.eiken.or.jp/ielts/compilation/detail_04.html
[15]http://www.cambridgeenglish.org/jp/
[16]https://www.21lri.co.jp/cambridge/index.html
[17]https://www.21lri.co.jp/cambridge/page7_2.html
[18]CPE / CAE / FCE | ケンブリッジ英語検定
お気づきの方もいらっしゃると思いますが,英検,TEAP,IELTSはどれも公益財団法人日本英語検定協会が関わってます.
TEAP,IELTSは会場数が少ないけれど,英検のノウハウを生かしてこの点はカバーすることでしょう.
これら7つの民間英語試験のうち,どれが共通テストとして採用されるのかはわかりません.
そして,共通テストを待たずとも,これらはすでに大学入試に導入されています.
共通テストにどの試験が採用されるか決まればたぶん学校の進路指導も動き出すでしょうけれど,まずは受けやすい英検から始めておくのがいいかなと思ってます.
それにしても,学校の英語の先生は言うまでもなく,受験生と親も仕入れておくべき情報があまりにも多くて閉口します.
ではまた!
【2018.3.27 追記】今朝の新聞を読んだところ,英検は既存の方式ではなく新たなものを開発するようですね.ちょうど子どもが受験に直面するので調べて別記事を書く予定です.